チカーノアルマジーロ

 

チカーノ・アルマジーロは、時々、“来日”する、らしい。 
彼は、自分はメキシコ系アメリカ人だと言い張る。どうしても言い張る。とにかく言い張る。“来日”の折、彼は必ず病的な“何か”をぶらさげている。“何か”はよく解からない。そして、彼は、 
『日本の四季はウツクシイネ。』などと言いながら写真を撮り、 
『これで、オレの病気は快復する。』などと呟きながら映画を創る。偶然、犬風の新作が完成した頃、“来日”した時は、無理矢理カヴァージャケットのデザインをしたりもする。 
エゴとナルシズム、そして、自己顕示欲のテロリストである。 
『オレは、アンディ・ウォーホールって奴は、どうも信用できねえなぁ。』 
犬風くんが、気分よく部屋で、ヴェルヴェット アンダーグラウンドの“バナナ”を聴いていた時の、チカーノ・アルマジーロの一言。 
『奴の血は青色じゃねーかな。そんな気がするぜ。』 
『あら、それはキレイじゃない。』と、風子ちゃん。『あたしはピンクがいいな。』 
『イヤイヤ、そーゆーコト言ってんじゃなくてよぉ。奴は“何”をやったんだよ、実際。』 
『ボクは昔、腕からミドリ色の血がでたよ。』と、犬風くん。 
『・・・・・・・。』 
『・・・・・・・。』 
『とにかくだ、信用できねぇーんだな。』 
『解からないから信用できないの?理解できないモノは信用できないってコト?』 
『オレ、メキシコ系だからなぁ・・・。』 
『関係ないわよそんなコト。だいたいあなた、何も信用してないじゃない。』 
『そんなコトないぜ!マリア様は信用できるおヒトだ、絶対。』 
『じゃあ、あんただってマザコンって意味じゃあアンディー・ウォーホールと変わりはないわね。』 
『ありゃま・・・。おい、犬風、何か言えよ。お前どう思うよ。』 
『・・・・ボクは“バナナ”よりも2ndが好きなんだ。そりゃあ“バナナ”は、間違いなく傑作だと思うけれど、ボクの血が、どうしようもなく欲求するのは、いつも2ndなんだ。ガイコツ・・・イレズミ・・・クロ・・・。』 
『・・・・・・・。』 
『・・・・・・・。』 

ブーン。新聞配達のカブが走り抜ける。 
カァカァカァ。カラスが朝ゴハンの準備をする。 
それでも、3人は、口には出さないけれど、3人共が、それぞれの思いを馳せ、今この空間を、“ファクトリー”だと、思い込んでいる。 
嗚呼、おバカさん達。